古民家フレンチのもてなしで山梨の食と一期一会『ラ・メゾン・アンシェンヌ』

ラ・メゾン・アンシェンヌ©YAMANASHI GASTRONOMY&WINE

山梨市のブドウ畑の中に建つ古民家のフレンチレストラン「ラ・メゾン・アンシェンヌ」。ランチは時間を区切って2組、ディナーは1組と1日3組の完全予約制で、特別な時間が過ごせるよう、ゲストをもてなしてくれます。腕を振るってくれるのは、都内の一流ホテルなどで技術を磨いた鈴木義豪(よしたけ)シェフ。

地元・山梨の食材を自らの目で選び、最適な料理法を用いて、美味なる一皿に仕上げていきます。それにペアリングするワインも、店のある山梨市と甲州市のものを中心にセレクトするなど、地元密着のローカルフレンチを堪能させてくれます。

ラ・メゾン・アンシェンヌ 鈴木義豪シェフ ©YAMANASHI GASTRONOMY&WINE
鈴木義豪シェフ
静岡県出身、1978年生まれ。幼少からの夢であった料理人を志し、大阪の調理師専門学校に学び、「ザ・ペニンシュラ東京」などで技術を習得。2016年6月、山梨市牧丘町に完全予約制レストラン「LA MAISON ANCIENNE」をオープン、独自の発想と進化し続ける調理法で「最高のおいしさ」を作り上げている。

古民家でもてなす1組限定の心温まるフレンチレストラン

ラ・メゾン・アンシェンヌ©YAMANASHI GASTRONOMY&WINE
最寄りとなるJR中央本線塩山駅からタクシーで15分ほど

山梨市牧丘の古民家を目指して、丘陵地帯のワインディングロードを走ります。周囲はブドウ畑に囲まれていて、こちらが別名「巨峰の丘」と呼ばれているのも納得です。標高を上げるにつれ景色が開け、南アルプスや富士山が望め、眼下に甲府盆地が広がります。そんな風光明媚な地に、豪壮な古民家が現れます。

ラ・メゾン・アンシェンヌ©YAMANASHI GASTRONOMY&WINE
朱の壁に紅葉が風流なエントランス
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店内の丸窓からは、ブドウ畑と甲府盆地が眼下に広がる

ラ・メゾン・アンシェンヌ©YAMANASHI GASTRONOMY&WINE
梁や柱、建具など古民家の建築好きにもたまらない空間

「この建物は江戸末期のもので、富士吉田から移築してきました。当時は富士山信仰で訪れた旅人が休憩をする宿のようなものだったそうです」と鈴木シェフ。ホールを担当する奥様の父親が古民家再生の事業を手掛けられており、その縁からこちらにレストランを構えることになったそうです。当時も今も、訪れる人々にレスト=休息を与える場所として、活用されているのは不思議な縁を感じさせます。

料理にもサービスにもじっくり向き合う

ラ・メゾン・アンシェンヌ©YAMANASHI GASTRONOMY&WINE

都内から移り住み、7年前にこちらでレストランを開業した鈴木シェフ。「最初は山梨のことを余り知らなったのですが、開店させるにあたって、いろいろ勉強していくと実に魅力的な生産者がたくさんいらっしゃることが分かりました」。

都内の一流ホテルで働いていた時代の食材は、基本的に市場を通して運ばれてくるものばかりだったが、今は身近にいる生産者から直接仕入れることが多いと言います。「朝、農家さんの畑に行って、目で見て、触って、何なら自分で収穫してお店に持ち帰り、ランチやディナーに使います。だから予め決まったメニューというのはなくて、その日の食材によって決めています」。鈴木シェフの持つたくさんの引き出しの中から、食材の特性によって、その日のメニューや調理法が考えられ、コースを構成します。

本日のメインには「豚肉のロティ」をつくっていただきました。香ばしさや食感を楽しめるよう、3時間ほどをかけてじっくりと火入れをした逸品です。ソースはタマネギを用いたもの。タマネギの甘みと豚肉の旨味との相性がぴったりです。

「まずは食材と向き合う時間を大切にしています。生産者の想いや、食材が育った環境も考えて仕入れます。そしてどんな調理法が一番魅力を引き出せるか、毎回が真剣勝負ですね」。

ラ・メゾン・アンシェンヌ©YAMANASHI GASTRONOMY&WINE
セラーには地元山梨市や甲州市にあるワイナリーの銘柄がストックされる

地元ワインのエヴァンジェリストとして

その思想はペアリングされるワインにも表れています。「ワイナリーにも直接足を運んで、醸造家の方と話しをして仕入れるようにしています。そしてどの料理に合うのか、自分達でも晩酌で飲んで、そのワインを理解した上で料理とのペアリングを決めています」。それは難しくも、楽しいところだと鈴木シェフは言います。

メインに扱うワインは山梨県の中でも、店のある山梨市、そして隣の甲州市に特化しています。そこにもシェフの思いが込められていて、「お客さんが飲んで美味しいと思ったものがあれば、近くにあるワイナリーに立ち寄りってもらい、買ってくれたらと思っています」。同じ地域で食に関わるものとして、ワイナリーの紹介も仕事の一つだと言います。食の体験が点で終わらずに、点と点をつないだ線となって、訪れるゲストを楽しませてくれます。

じっくりと時間をかけた料理に、地元のワインを合わせるスタイル、古民家という空間など「この地だからこそできること」と鈴木シェフ。さらにランチは時間を区切って2組、ディナーは1組と限定しておもてなしすることで、より良いサービスが生まれます。「コロナ禍で始めたのですが、ゲストの方々との距離が近くなり、より細やかなコミュニケーションが取れるようになりました」。

江戸時代からの古民家という時空を超えた空間で、丁寧な仕事から生まれる料理や細やかな心遣いを味わい、この地の恵みに想いを馳せる。ここではそんな特別な時間を享受できます。

LA MAISON ANCIENNE

山梨県山梨市牧丘町倉科5662-5

TEL. 0553-88-9152

ランチ11:30~1組,13:00~1組 完全予約制・

ディナー17:30~1組 完全予約制

定休日 火曜日

URL:https://www.ancienne-jp.com

Interview&Text:Tomohiro Tsuchiya

Photo:Hiroyuki Jyoraku

画像:©YAMANASHI GASTRONOMY&WINE